麻瀬憧庵                                 


スピーカー改良報告へ                   JBL 2405 と PIONEER PT-R7 比較試聴記      


  まず初めにお断りしておかなければならない事は、ここに書いた二つのスピーカーの比較試聴記事は、あくまで私の手持ちの物に関してのみの、私の感想にすぎないという事です。

     

PT−R7に関しましては、37,8年前に購入し、それ以後、長年に渡って使い倒してきた物ですし、2405はつい最近オークションで購入した物で、生産年がいつかも、使用頻度がどれくらいかも全く計り知れない物です。
という事で、この点を踏まえたうえでお読み頂けましたら幸いでございます。

 まず、本文に書きました比較したデータというのは、M−115ウーファーとLE−14Aを比較試聴しようと思い至ったSN比グラフです。
同じくあのサイトにおいて、2405の特性グラフを手に入れたのですが、そこに表示されていたSN比グラフにおいて、4kHzに与えた入力に対しての各周波数における反応値がおおよそー60dBとなっており、これはM−115とほぼ同じレベルの低歪という事で、俄然興味を覚えた訳です。
  2405                                    PT−R7
    

 一方、右のグラフは、PT−R7の取扱説明書に記載されていた特性図です。
測定方法がまた違うでしょうから、これをそのまま比較しても良い物なのか分からないのですが、このグラフでは、高調波歪は再生音圧からー40dB〜−50dB位で、更に高域にかけて悪化して行く様子が見られます。

このSN比の差ばかりとは言えないのでしょうが、M−115とLE−14Aの比較試聴では圧倒的な差が出ていましたので、もしかしたら顕著な差が見られるかもしれないと考え、比較試聴するべく2405の購入に踏み切った訳です。

 購入後、まず片方のツィーターを2405に変更しました。 こうしてクロスオーバー周波数はそのままの状態で、もう片方のPT−R7の音圧に正確に合わせました。
この状態でモノラル録音盤を軽く試聴したのですが、おやおや、何かもう変化が感じられます。

その後、もう片方も交換し、微妙な音量の調整等を行いながら試聴を繰り返しました。

それではここから、私が感じました二つのユニットの音の違いを詳しく書いてまいります。

まず、私にはこの二つのユニットの音の違いはかなり顕著に感じられました。
ドライバー交換後も残っていた不満点も、2405に交換後はほぼ全て、軽減、あるいは消滅しました。
一番大きな不満点は、やはりフォルテ部分で音が微妙に割れる、歪む、弾けるという物でしたが、これはかなり解消されました。よっぽど特殊な録音物でない場合はほぼ気にならないレベルに収まるようになりました。 これは、あの歪率の差がダイレクトに反映された結果なのでしょうか。

更にツィーターを加える事で生じていた、音が細く感じられるように変化する現象も無くなりました。
従ってドライバーとの繋がりが良くなり、キャラクターの変化も感じる事が無く、音像も厚く、太く、力強く、濃密になったように感じられます。

それでいて、音の煌めき、輝き等は格段にアップし、シンバルの音等は、叩いている素材そのものが変わってしまったかのように明らかな違いを感じ取れます。 極端な言い方をすると、アルマイトの鍋の蓋から本物の真鍮へという感じです。
音の感じを字で表すならば、シャン、シャン、鳴っていた物が、シャリン、シャリンへ、チリ、チリ、がチリン、チリンへという様な物でしょうか。

全ての音に今まで以上に血が通い、演奏者の息吹きまでもが感じられるようになったのですが、ピアノなど弦系の音の変化が特に好ましく、今まで弾ける様に割れていた部分でも綺麗な響きが再現されています。
この響きの部分なのですが、全ての楽器において今までより一回り大きく空気中に放射され、部屋中いっぱいに音の余韻や響きが広がる感じです。

ここで、シンバルの音に焦点を絞って書いてみます。

ドラマーがシンバルを叩いた場合、スティックがカチコーンと当った直後にそこを中心としてシャランと音が広がって行きますよね。
そのシャランと音が広がって行く面積が、2405の方が一回り広いんです。更に、PT−R7では、そのシャランと広がった一番外側の音が、その周りの空気にとけこんでいってしまい音のエッジが認識しずらくなる感じなのですが、2405ではそのシャランという音の一番外側の部分が空気から分離していて、その結果、音が空気中に浮かんでいるように感じられます

演奏者の最後尾に位置するドラムスの場合、シンバルの音はリスニングポイントからそれ相応に離れて鳴っている訳ですが、今まではその位置とスタジオの後ろの壁との空間が感じられるような事はあまりなかったのですが、このシンバルの音が空気中に漂う感じが出てきたおかげで、その位置とスタジオの後ろの壁との距離感が感じられるようになり、おかげで音場感もアップしました。

絵にしてみると良く解るんですが、白い紙に水色のを書けば、このははっきりと認識できる訳ですが、もし水色の紙を選んだ場合、水色のは見えにくくなってしまいます。このように、音と音以外の部分の差が少ないのがPT−R7で、より大きいのが2405だと言えると思います。
この事は全ての楽器の音にダイレクトに影響し、実在感の部分で圧倒的に向上し、今までとは相当な違いを感じ取れます。

この音と音以外の部分との差とは一体何かと申しますと、過去の取り組みで、同じような経験をたくさんして来ておりますので推察する事が出来ます。

例えばラインケーブルを交換した結果。例えば電源ケーブルを交換した結果。例えば電源に200Vを導入した結果。
全て、音がハッキリ、クッキリ、厚く、シャープになった訳ですが、その原因はノイズの減少にあり、その結果、目の前の空気が澄み、音の見晴らしが良くなったと感じた訳でした。   ⇒ Mノイズが空気を汚す ご参照ください。

つまり、ノイズレベルが2405の方が低い、言いかえればSN比が大きいという訳で、その結果空気の透明度が増し、物の見晴らしが良く、音の分離が向上するという事で、空気中に音の余韻が漂い、スタジオの奥の壁との距離感が浮かび上がり、その為音場感がアップし音に実在感が増すのでしょう。
特にライブ盤での奥行き感の増大は顕著で、観客の拍手もより立体的になり人々の存在感もぐっとアップしました。

結局、あの二つのグラフにおけるSN比の差が、実際の音にも顕著に表れたと言えるのでしょう。
更にこの二つのユニットには能率に大きな差があり、この事も音の変化がはっきり表れた理由だと思います。
カタログ上の能率は、PT−R7の95dBに対して2405は105dBと10dBもの違いがあるのですが、実際、交換後、ツィーター用のアンプのボリュームを絞り、更にチャンデバの入力レベルをぐっと下げ昔と同じ音量にしましたので、つまりアンプ等のノイズレベルも10dB分下がっている訳です。 スピーカーのSN比の差10数dBと、アンプ等のSN比の改善分の合計が再生音を向上させたと言えるのでしょう。

こうなると、全てのスピーカーユニットの能率はより大きい物を選んだほうが良い結果を得られる、という事になるのかもしれませんね。

                                                                     2015年7月3日・記

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