麻瀬憧庵                                 

魅惑のスキーイング



 みなさんお元気ですかぁ〜 スキーやってますかぁ〜 私はやってま〜す!!

いや〜、スキーは楽しいですねぇ〜  私が長い人生で経験したあらゆる事の中で一番魅了されたのはスキー。
なんでこんなに楽しいんでしょうねぇ〜?!

二十歳の時、親戚に連れられて行った菅平高原で初めてスキーを経験しました。

宿の前のリフトにスキーを抱えて乗り、終点で降りてからスキーを履いて早速滑り始めました。

親戚からは、「こうやってハの字にすれば止まるから」、とだけ教えられ、そこから一人で滑り始めたのですが、その時履いていたのはその親戚から買ったお古の革製のスキー靴、角付けも何もあった物ではありません。

イヤ〜、もう怖くて怖くて、5m落ちたら尻で止まるを繰り返し、下まで降りるのにどのくらいの時間が掛かった事か。
その時の恐怖心と緊張感は今でも思い出す事が出来ます。

それでも、1日滑っているうちに曲がれるようになり止まれるようになり、そうなるともう面白くて面白くて。
2,3日目はも〜う、楽しくて楽しくてしょうがなかったですねぇ。

その後社会人になり、最初の頃は学生時代の友人達と暮れ正月にスキー旅行に行く位だったのですが、25歳位から本格的にのめり込んでしまいました。
しかし、いくらやっても上手くならないんですよね〜。 

私、人に習うのが苦手な性分。 自分で物事の分からない部分を解明していくその過程が楽しく、その過程を乗り越えてこそ達成感を味わえるという事を小さい時から経験してきましたので、その分どうしても時間が掛かってしまいますが、それにしても上手くならなさ過ぎ。よくもまあ、めげずに続けてきたものだと思います。

そんな中、上手くなる転機というのはずぅ〜と年をとってから、意外な事から訪れました。

店を始め、子供が出来てからもスキーに行くのは一人でだけ。 家族はほったらかしにしてきたのですが、下の娘が小学校2年生の春休み、さすがにまずいなと思い春スキーに連れて行く事にし、その際どう教えたらよいだろうかと色々思案したのが、自分が上達するきっかけになりました。

それから毎年2,3回は、娘とかみさん(沖縄出身)を連れて行き教えたのですが、娘はあっという間に上手くなったものの、かみさんの方が何度やっても上手くならない。 しかし、それを見ていてどうしてうまくいかないのかという答えを目の前に提示されているかのごとく、色々な事が理解出来て行く様になりました。

娘が大きくなってからは又一人だけで行くようになったのですが、その後の上達具合は加速度的にアップし、今もその上達速度は低下していないと言えるかもしれません。

 スキーの良さは年に囚われない事。 いくつになっても続けられるし上達する事が出来ます。 
これ以上の生涯スポーツはありません、何故かというと、スキーは筋力を必要としないスポーツだから。

スポーツで何故筋力を必要とするかと言えば、まずは自分の体を動かす為、走ったり、飛んだり、泳いだり。 もう1つは対象物を動かす為、球技であれば、ボールを投げたり、打ったり、蹴ったり、運んだり。 格闘技であれば相手を投げたり、蹴ったり、押したり、倒したり。

ところがスキーに於いてはそのどちらの筋力も必要ありません。 斜面に立てば勝手にスキーは滑り始めてくれます。 坂道を下る時の自転車と同じなのです。

斜面を左右にターンしながら下りて来るスキーヤーがしている運動はと言えば、腰を上げたり下げたりしているだけ。ストックを動かす動きも手首をほんの少し動かすだけ。 ですので、年をとって筋力が落ちるに従いパフォーマンスが低下する他のスポーツとは全く違う、まさしく生涯スポーツと言える特異なスポーツなのです。

但し、ターンしている時、雪面からの反力をスキーヤーは受けますから、それに伴い一部の筋肉には負担が生じますが、その筋力は滑る事により付いてきますので、自ら厳しいトレーニングをしなければいけないという事はありません。(もちろん、レーシングの世界では全く違いますよ。ここに書いているのは一般的なゲレンデスキーヤーの事ですから)

 先程、スキーは坂道を下る自転車と全く同じと書きましたが、例えば、急な長い坂道を自転車で下る場合、スピードオーバーにならない様ブレーキを掛けながら下りて来る訳ですが、もしブレーキが十分に利いてくれなかったとしたらどうでしょう。
ブレーキレバーを一杯に握ってもあまりスピードが落ちず、コーナーでは飛び出しそうになったり対向車線にはみ出しそうになったり、どれほど怖い思いをし、体中に力が入りガチガチになるか。 坂道を下りきった時にはもうフラフラ状態になっている事でしょうね。

スキーに於いて、この自転車のブレーキの役目を果たすのがターン技術なのです。 ターンする事で滑走スピードをコントロールし、安全に滑り下りて来る事が出来るのです。
従って、技術の未熟な時ほど体中が疲労してしまい、技術の上達と共にその疲労感を感じる事は少なくなるのです。 但し、滑走スピードが上がり、ターンが正確になるにつれ、一部の筋肉を酷使する事にはなるのですが。

この様にスキーに於いて技術を習得する事、それも基本技術を完璧に習得する事がいかに大事な事なのか、そこが又、他のスポーツと違うところだとも言える部分なのです。

どんなスポーツも見様見真似で始める事が多い訳ですが、これをそのまま続けると結局自己流の動きが身に付いてしまい上達を妨げる事になります。 しかし普通のスポーツの場合それでも十分楽しめる事が多く、それ程基本にこだわらなくてもそのまま何十年も続ける事も出来ると思うのですが、スキーの場合は全く違います。

初心者のターンも上級者のターンもターン原理は同じ、そのターン原理を正しく理解し、それに沿った体の使い方を身に付ける事が基本を身に付ける事であり、スキーにおいてはそのことが他のスポーツ以上に大事なことであり、基本を身に付けない限り上達は望めません。

技術的に未熟でも、ゲレンデを滑走するのは大変爽快であり、それだけでもスキーをやった甲斐はあると言えるのですが、やはり正確なターンができたり、難しい斜面(急斜面やアイスバーンやコブ斜面など)を攻略できるようになった時に感じる面白さは比較になりません。

やっとコブ斜面を滑る降りて来る事が出来るようになり、コブを楽しめるようになった時悟った事があります。 コブを滑る事が出来ないという事は基本が身に付いていないという事なんだと。

コブの頂点を越える時のフォーム、このフォームを初心者がプルークボーゲンをし始める時に教えてあげる事が必要なんだと。 このフォームを身に付ける事が出来れば、その後とんとん拍子で上達して行くだろう事をその時確信したのです。

その様な観点で最近のスキースクールインストラクターの指導の様子を見ていると、全く納得できない事だらけ。
そんな教え方しちゃって良いんですかぁ? っというような例を多々見かけます。

気になったので、この間図書館から『日本スキー教程』というSAJ監修の本を借りてきて読んでみたのですが、疑問を感じる部分が多々ありました。
これはスキー技術を分析して、これから始めるスキーヤーにどのように教えて行けばよいかという、スキー教師の教科書の様な物なのですが、あまり納得のいく内容では無かったですね。
図書館にある物は現在の教程より一つ前の本なのですが、基本的な内容はほとんど同じなようです。)

初めて雪上に立ち動き始める時、当然、今まで地面の上で行ってきたのと同じ体の使い方ををしようとします。
ところが、それでは全くスキーをコントロールする事は出来ないのです。

地上で体を動かす為の原動力が何かというと、それは地面との摩擦力であり、地面は動かずにこちらの力を全て受け取ってくれるというその拠り所があって初めて一歩前に踏み出せるのです。 ところがスキーに於いてはこの摩擦力が極端に少なくなり、その拠り所を見出す方法を知らないうちは、まるで赤ちゃんがやっとよちよち歩いている状態となんら変わらない訳です。

スキーを履いて初めて斜面に立った時、人はどんな気持ちになるのか、どんな恐怖を味わい、どれほどの緊張感に囚われるのか。 この本はその様な初心者の心理も意識も行動もあまり分かっていない人達が書いているのではないでしょうか。

結局この本は 気がついたらうまくなっていた、という人達が書いている のでしょうね。

だからステップアップをする為に必要な、一番初めの大切な事を疎かにしているのではないでしょうか。

初めてやる人が真っ先に身に付けなければいけない事をしっかりと教えないまま、こういう事をやりなさいと、その先の事をやらせようとしているように感じました。

もっともっと、大事な事を先に教えるべきなのに、その大事な事が何なのか、この本を書いている人達は分かっていないようです。 
そして一番肝心な、その大事な事をやる為に身体の各部分をどのように使うべきなのか、どのような意識を持つべきなのか、そういう事が具体的には一切全く書かれていないのです。 だから実際の現場で正しい教えが成されていないのではないでしょうか。


 統計によるとスキー(スノーボードを含む)人口は、1998年の1,800万人をピークに近年ではその三分の一の600万人ほどに減っているそうです。
このうちスキー人口は400万人弱、スノボ人口が200万人強という事ですが、特にスキー人口の方が激減したそうです。

実際にゲレンデで感じるのは、20数年前にスノボ人口が倍々ペースで増え、スノボのピークの時には、ゲレンデにスキーヤーが5人位しかいなかった事を覚えていますので、今はずいぶんスキーヤーが増えたなと思うのですが、ただ、スキーヤーの半分位はシニアであり、それも70代以上の方が多く見受けられますので、このままではスキーもゴルフみたいに衰退していくスポーツかもしれないと暗い気持ちになってしまいます。

私の経験から言うと、スキーを始めてなんとか滑れるようになった当初はものすごく面白くて夢中になるのですが、やはり自己流で続けて行くとすぐ壁にぶち当たり、4,5年もするとある時ハッと自分の下手さ加減に気付く事になり、その時、急激にやる気を失いスキーから離れて行ってしまう人がとても多いのではないかと思います。

今のスキーはその当時の物とは激変しており、圧倒的にターンがし易くなっていますので、それ程気分が減退する事は無いと思いますが、やはり最初に大事な基本を正しく身に付ける事が出来れば上達のスピードははっきりと違ってきますし、逆に基本を疎かにして経験だけを積み重ねて行くと、すぐ限界に達してそこから先に進めなくなってしまいます。 本当に、如何に最初に正しい事を教えてあげるかという事が非常に重要な事なのです。

 という訳で、私が長年にわたり苦労(苦悩)しながら、少しづつ蓄積してきた知識を元に考えた 『スキー技術習得カリキュラム』 を備忘録がてら、ここに載せる事に致しました。
ご本人だけでなく、お子さん等に教える時にも役に立つと確信しておりますので、ご一読頂き、お役に立てて頂く事が出来れば幸いです。

                       ⇒   『スキー技術習得カリキュラム』(初級・中級編)

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