麻瀬憧庵                                 

スピーカーシステム最終調整3


 JBL2461の高調波歪みの問題もダイアフラム交換により解決しましたので、いよいよこれが最後の調整に入りました。  ところが、これが結構手こずりました。 

まずは周波数特性を測定しながら、グラフ上で結構よさげな状態にしておいてから試聴して微調整ということを繰り返したのですが、これがなかなか決まりません。 左右の音が定まらないのです。
合ったと思ってもう一度測定すると、左右でちょっと違いがあり、変だなと思いながらもう一度試聴すると今度は確かに違いを感じてしまうというような堂々巡りをほぼ2か月も続けてしまいました。

何故、こんなことになるのかと思案したところ、ものすごく単純だけれどとても重要なことに気づきました。
その答えは ・ ・ ・ センターで聴いていない!!

左右の音を同じにするためには、まず完全なセンターに位置取りすることが必要なんです。
そうすることで初めて左右の音の違いを正確に知ることができるのです。 数mmどちらかにズレてしまうだけで調整は失敗します。

そこで、センターに正確に位置取りする方法を考えました。    詳しくは、こちら をお読みください。

その後、一時は順調に進んだのですが、そのうち問題発生。
右チャンネルのハイルドライバーからシャリシャリとノイズが出るようになってしまいました。

初めアンプだろうと思い、他の空いているチャンネルに接続したのですが治らず、スピーカー本体にも問題なし。
結局、チャンネルデバイダーの6チャンネルがいかれていることが判明。

う〜ん、どうしたものかと思いながら購入したサイトを見てみると、ゲゲッ、当時3万円位だったものが今6万円弱。
倍近くに値上がりしています。 いったいどうしたんだ? 円安だからか?  ちょっと買う気が起こりません。

仕方がないので、取りあえず5つのチャンネルだけで使うことにして、ハイルドライバーを外して2402の高域を目一杯使うようにセッティングしてみました。
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1) JBL2402を7kHz〜上出しっぱなしにした状態。
イコライジングによりできるだけ凸凹を減らしています。
ハイルドライバーの場合、20,000Hz近くまで再生できるのですが、15.000Hzちょっとまでしか出ていません。

この状態で試聴したのですが、やっぱり駄目ですね。
左右の差を感じてしまいます。

こちらのチャンネルは空気が少し濁るような感じで透明感が落ち、シンバルなどのチリチリした高音が壁や天井にへばりついてしまうように感じます。 やはりハイルドライバーを使用している左チャンネルの方が、音が分離して空中に漂い瑞々しい。

正弦波を再生して周波数特性を測定している時、大体、
13.500Hz位からほとんど何も耳に感じなくなってしまうのですが、超高周波を含んだ波形の違いを脳は感じられるのかもしれませんね。

昔はハイルドライバーを切ったり繋いだりしても殆どその差を感じられなかったのですが、今回は結構わかりましたね。私の脳はまだバージョンアップし続けているのでしょうか。

こうなると2402ではなく、ハイルドライバーを活用する必要があるようです。

ここでハイルドライバーのTHDを測ってみました。
2) 3) 5kHz〜8kHzは45dB位で約0,6%位でしょうか。
4) しかし、8kHz以上では俄然良くなり、50dB位の差がありますので、2402より良い数字です。

5) 6) 結局、左右共2402を外し、ハイルドライバーだけにして調整しました。

初め、2461の外側に置いてみたのですが、特性的にあまり良い繋がり方が出来ませんでしたので、この様に2461のホーン上部に直接取り付けました。

ハイルドライバーの周波数特性はフラットな部分がほぼなく非常に使いずらい物で、またチャンネルデバイダーのイコライザー機能も、実質バンドパス1ヶ所しか使えないので調整にはてこずりましたが、何とか左右共格好がつきました。

 ここで、私が左右スピーカーの音合わせをするときに使っている音源を紹介します。






この作業をするにあたっての音源はモノラル録音盤しかありませんよね。
と言う訳で、まずは 

『ヘレン・メリル・ウィズ・クリフォード・ブラウン』
いわずと知れた、ジャズ・ボーカルの名盤ですね。
私がいつも調整のために聴くのは3曲目にあたる
「ホワッツ・ニュー」
ベース、ボーカル、ドラムス、ピアノ、トランペットのすべての音が縦1列に並ぶようにセッティングするのが難しい。
又、たとえ1列に並んだとしても、顔を傾けてみると左右で微妙に音が違うということも多々あり、トランペットやピアノの音色、ドラムのブラッシングの音の違い、シンバルの音色の軽さの違い、果てはノイズの音量音質の違いまで、突き詰めようとすると、永遠にこればっか聴いていなければならなくなるほど。

もう1枚は テナーサックス奏者、ソニー・ロリンズの最高傑作
『サキソフォン・コロッサス』
この中の2曲目  「ユー・ドント・ノウ・ホワット・ラヴ・イズ」

テンポもスローで、サックスの音も特にはっきりと張り出してくる録音で、この張り出し方の違いが左右の特性の違いで如実に現れます。ここを調整するのが難しい。
又、上と同じように、ピアノ、スネア、シンバルの音質を左右で合わせるのも肝心な作業です。

3枚目は 山口百恵『秋桜(コスモス)』

これはステレオ録音ですが、何故か左右スピーカーの特性がちょっとでも合っていないと、声がセンターに来てくれない。
うちの場合はどうしても左に寄ってしまうことが多くて、はじめはそのような音源なのかと思っていたくらいです。
又、サビの部分で声が微妙に割れる傾向があり、そこをいかにクリアするようにセッティングするか、ぎりぎりの調整が求められます。

と、このような音源を用いて調整を重ねていった結果、まったく予期していなかった音が出現しました。

反響音、残響音が今までよりさらに多量に聴こえる様になったのです。 今まで、全く聞こえなかったような音源でも聴こえる様になり、ほぼすべての音源でそれらの音があふれ出てきます。

目の前の空気がさらに透明感を増し、音の分離が格段に良くなっています。
シンバルの音の実在感が非常にアップし、その響きが空中に漂うさまは今まで味わえないものでした。

スタジオやライブ会場などの左右や後ろの壁、天井などからの反響音で目の前の空気が何か得体のしれない音でいっぱいに満たされているように感じます。 目の前に濃密な空間が出現しました。

そして、目の前に出現している音そのものも、よりリアルに生々しくなりました。
以前の音は輪郭線のようなはっきりしたエッジにより空間から分離し浮き上がっているように感じたものですが、今はそれが消え、油絵や水彩画のように色の使い分けと積み重ねによる後ろの風景との分離感をもたらすような感じに変わり、音が少し柔らかくなったように感じます。
しかし、空気が澄んだ分背景との距離感が増し、結果、陰影による分離感が増し、目の前の音の実在感は以前より向上しました。

これは一体どうしたことなんでしょう。
思いつく原因を上げれば、7kHz以上をハイルドライバーだけに任せたからということでしょう。

この直前にJBL2461のダイアフラムをフェノリックからRADIANに替え、更にハイルドライバーにその上全部を任せた事が、高調波歪みの低減に繋がりS/Nの向上を果たした為、このような多量な反響音の出現につながったのは間違いないことなのですが、それだけではなく、このハイルドライバーの普通のスピーカーとは違う動作方法がこの空間を出現させたこともまず間違いのないことだと確信を持って言えることです。

ハイルドライバーを導入した時に、この動作方法の違いによる音質の向上について考察しているのですが、それが全く間違いのないことだったことがはっきり致しました。
    詳しくはこちら をお読みください。  


但し、その時はこれほどの音の変化は認識できなかったので、やはり、それ以降の脳のバージョンアップが進んだということなのでしょうか。

とにかく、大満足の音が出現しました。 もうほんとに打ち止めかしら!?

                                                  2024年1月2日・記

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