麻瀬憧庵                                 


J目は耳以上に音を聴き


 人間の可聴周波数帯域は 20〜20,000Hz と言われていますが、もし聞こえるにしても10代まででしょう。
20代になったら、耳の機能も他の部位と同じく老化により衰えて行くのは間違いない事で、一説には、60代では 4,000Hz 以上の音は耳の感度が低下していて聞こえにくくなっていると言われています。

でも、実際の感覚としては、若い時より今の方が良く聞こえるような気がします。
音の表情や細部のニュアンス、高域の響きや低域の豊さ等、若い時には気付かなかった、音楽や音そのものが持つ性格や特徴の微妙な部分まで、今の方がより理解でき、その分、より音楽を楽しめるようになっていると思います。

 結局、音の真の実態は脳内で作り出されている物。どんなに耳の機能が優れていても、音を聴く喜びを感じなければ、脳は単純な処理を行うだけ。もっともっと良い音を聴きたいという強い欲求を持つ事により、脳の働きも活性化され、高度な処理が可能になり、結果として良い音を聴く事が出来る耳の持ち主になる事が出来るのでしょう。
そういう意味では、実際の聴力等はあまり意味のないものなのかもしれません。

 音を聴く為に耳は非常に大切な部分であることは間違いありませんが、音は空気の振動として伝わってきますので、体全部で音を感じ取っているともいえます。
低音なんかでは、そういう事をはっきり感じることができますね。

 その体の中で、音を感じ取る為にとても重要な部位として考えられるのが眼なのではないかと思っています。
特に耳の機能が低下して聞こえなくなってきた高音は、目が十分に補ってくれているのではないでしょうか。
脳外科医の中には、眼は脳の一部であると主張される方もいらっしゃるほど、眼は直接的に脳とつながっている場所だそうです。眼球で受けた振動は視神経を通して脳に伝わり、耳からの情報とミックスされて音を形成しているのではないでしょうか。

 皆さんは音楽を聴く時に目を閉じていらっしゃいますか?
音を聴く時に神経を集中する為には目を閉じた方が良いとお考えになる方も多いと思いますが、私は全く逆だと思っています。
目を大きく見開いて音を聴いて下さい。その状態と眼を閉じた状態で音を比較して下さい。初めのうちは解らないでしょう。非常に小さな違いに感じられる物ですから。でも聴き続けて行くと、その瑞々しさ、リアルさ、シャープさ、密度感等、とても大きな違いに気づくことと思います。
この時、目を閉じるんではなく、開けた状態で目の前を何かでマスクするようにして比較されると解りやすいと思います。

但し、眼からの視覚情報が脳に入ると、脳はそれの処理に機能の大部分を割いてしまいますので、音の処理能力が低下する事になります。ここら辺はパソコンと全く一緒で、いくつもの処理を同時に行おうとすると、パフォーマンスは極端に低下してしまいます。

 これを防ぐための処置としましては、部屋の照明はかなり暗めにする必要があり、又、眼の焦点も何かに合わせる事はせず、虚空を見つめるような感じでピントは合わせないようにする事です。
但し、部屋の照明をすべて落とし真っ暗にしてはいけません。平衡感覚がなくなり、センターの位置が解らなくなり、音楽を楽しめる状態とは程遠い心理状態になってしまいます。

メガネをかけていらっしゃる人は、是非はずして音楽を聴いてみて下さい。ピントもぼやけて一石二鳥。
新たな音が聴こえてくるかもしれません。

 昔、『座頭市』という映画で、勝新太郎という役者が、盲目の按摩を演じていました。普段は目を閉じているのですが、いざ切り合いという時には、眼をカッと見開き相手の動きを眼で窺うという動きがすごくリアルで、まさに空気の動きを必死になって掴み取ろうとする様が良く表れていました。

音を試聴する時は、私もこんな感じで聴いています。                      2012年10月5日・記

 2017年8月13日
追記

 この項、オーディオ雑記帳『とんでもない事実』に、その後経験した事を書きました。 是非ご一読下さい。

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