麻瀬憧庵                                 


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 思いついたのは、ショッピングサイトで見つけたウレタンスポンジで出来た吸音シートを前面の壁一面に張り付ける事。
とりあえず36枚セットを購入してみました。
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1) 圧縮されたスポンジシート12枚入りが3パック。 なんか耳栓のおまけ付きでした。

復元方法が書いてある説明書が入っていましたが、袋の口を開けたらすぐに膨らみ始め、4,5分でほぼ正常な形に戻りました。

2) シートはこんな形。 波型が規則的に並んでいます。 卵型と書いてあるところもありました。
厚さも数種類あるようでしたが、これは2,5cmと一番薄い物です。

普通の両面テープで貼り付けようとしたのですが、すぐ剥がれてしまいダメでした。仕方なく両面テープに接着剤を少量塗って張り付けました。

3) 前の壁に30枚、音響補正ボックスに3枚づつの6枚、とりあえず施工して試聴しました。

舞台の絵を描く前は壁全面を黒色に塗っていたのですが、艶消しペンキでも結構光を反射してしまって、そこに壁がある事を脳が認識してしまいました。 その点、このスポンジシートはほとんど光を反射しない為、壁の存在をほぼ忘れさせてくれます。 また波型の模様が奥行き感を感じさせてくれ、スピーカー裏に空間が広がったような錯覚をもたらしてくれます。 ここまではいい感じ。

さて試聴ですが、ハッキリ言って音的な向上は全く期待していませんでした。 その前の時点で相当改善されていましたから、こんな薄いシートを貼ったくらいではほぼ変化なしだろうと思っていたのですが。

ベースの音で始まるイントロを聴いた瞬間、 「ウワッ、全然違う!」 と驚かされました。
音自体の前後方向への厚みが増し、音の周りの響きや輝きも増し、体に直接押し寄せる音圧も感じます。

歌が始まると、今歌ったフレーズが左右から後ろまでスタジオ一杯に広がって、一秒位かけて消えて行きます。
音響補正ボックスを設置した時に、この反響音が顕著に表れ、目の前の空間に奥行き感が加味され立体的な音場空間が現れました。 その後、有孔パネルを使用した吸音壁など対策を重ねて来た為、結構な量の反響音が出現していましたが、それとは比較にならない位の出方です。

この音の変化からいえる事は、前面の壁からの反射波、つまりスピーカーから出る音波と同じ方向性の音波が、再生音に多大なる悪影響を与えているという事でしょう。

4) あまりの違いが出たのでもっと徹底的にやってみようと思い、スポンジシートよりも6倍くらい密度の高い吸音ボードを前面の壁に貼り、スポンジシートは後ろの壁に張り替える事にしました。

ところが、これは音の向上は感じられず、ほぼ変化なしでした。 リスニングポイント後部の壁からの反射波はあまり音に影響を与えないのでしょう。
更にこの吸音ボードは少し光を反射してしまい、壁の存在を脳が認識してしまいます。

5)、 6) と言う訳で、この後波型の吸音シートを再度購入し、吸音ボードの上に重ね貼りし、横の壁と天井もスピーカー部分までぐるりと張り巡らしました。

これで相当な向上が図られたのですが、この後、

7) スピーカーのバッフル部分にも貼り、スピーカー周りの反射波も削減する様にしてみたところ、これが意外に効果を発揮し、音源に入っている素の音が目の前に出現しているのではないかと思わされる位あやふやさのないくっきりした音が現れました。

ボードとシート合計204枚、専用両面テープなど含め2万3千円程かかりましたが、出現した音の価値はお金で換算できない位すさまじい物でした。
 今まで、トランペットやサックス等は目の前にはっきり、くっきり表れてくれていたのですが、トロンボーンだけは音の輪郭がイマイチあやふやで、ほんの少し引っ込んだところでなっている感じだったのですが、そのあやふやさが払拭され、目の前にラッパの口が存在するかの如く生々しい音が出る様になりました。 

ボーカルに於いては、音源によってはどうしても歪む部分が存在し、今までは周波数特性の調整によってこれを解決するべく色々やってきたのですが、彼方立てれば此方が立たぬ状態でどうしても不満部分が残っていました。

ところが、この部分もほぼ解消されました。 やはり、位相の異なる音波が合成されることにより、凸凹の大きな波になる事による弊害だったのでしょう。       ⇒  H音が消える  参照

やっと、シナトラやビートルズがまともに聴けるようになりました。

全ての音が余すことなく再現されます。 エンジニアの意図が手に取るようにわかります。
リバーブと呼ばれる反響音の入れ方の違いに、エンジニアの考え方の違いが表現されているようです。

ボーカルにも伴奏楽器にもリバーブをかけている音源、ボーカルにかけず伴奏楽器だけにかけている音源、驚くほどのリバーブをかけている音源、最小限のリバーブしかかけていない音源。 これらによって、目の前の音場空間の現れ方にも変化が生じます。

更に、余分な反射波が耳に届かなくなったからなのでしょう、音自体の濁りが全くなくなりました。
スポイルされていた音の艶や輝きが全て表現され、音の実在感が素晴らしく、あまりの生々しさに背筋に震えを感じる事さえあります。

「原音再生」 オーディオの最終目標はこれですが、ここで言う原音とは楽器そのものの生音という意味ではなく、エンジニアが音源に封じ込めた音と捉えるべきですが、その為には、エンジニアがその音を作ったモニタリングルームと同じ環境をオーディオルームに備えないといけないという事なのでしょう。     ⇒  オーディオ雑記帳その5「連立方程式解けました」

                                                                   2023年6月16日・記

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