麻瀬憧庵                                 










            

図書館所蔵お薦めアルバム@Jazz その2−現代


 今活躍しているジャズミュージシャンも沢山いる訳ですが、アメリカのジャズシーンっていうのはもう死んだも同然なんでしょうね。
音聴いても何も伝わって来ません。緊張感も熱気も演奏者の思いも何も感じられません。

 その上録音も平板で奥行き感に乏しく、音場感も感じられません。機材のせいで音自体はクリアーですけど、脳みそが納得するような空間が、目の前に出現する事はありません。
昔は、ジャズの録音エンジニアは独自の哲学と技術を持ち、その世界をリードしていたんですけどねぇ。
やはり、音楽自体が斜陽ですから、技術のある人間は別のジャンルに向かうんでしょうね。

 そのアメリカに引き換え、日本のミュージシャンがジャズシーンでは大活躍。
昔々のアメリカのジャズメンの魂を継承しているのは、今の日本の若いジャズメン(ウーメンが多いけど)と言っても褒めすぎではないでしょう。
その上、日本のスタジオでの録音も良いですよう。機材云々ではなく、やはりエンジニアの感性と、音楽に対する思いが一番大事だという事でしょう。
それとヨーロッパ。昔から北欧、ドイツ等の録音はクリアーでエッジの聴いた鮮烈な音でしたが、今も全く衰える事はありません。
「アキコ・グレース」のアルバム『フロム・オスロ』です。

 ドラムス、ベースを従えたオーソドックスなピアノ・トリオの演奏なんですが、チョットフリーっぽい。
テクニックもあり、イマジネーションも溢れるばかりです。ただもう少し血の通った演奏の方が好きなのですが、このアルバムの一番の売りは音そのものにあるのでしょう。

 ノルウェーの首都オスロにある、「レインボー・スタジオ」で録音されたその音は、とても繊細で煌びやか。
 澄みきった空気の中を、まるで夜空から星のカケラが降り注いでくるように、部屋中にキラキラした音の粒が舞い踊ります。
この音を聴いているだけで、体中が浄化されるようです。
オランダ人ギター奏者 「ジェス・バン・ルーラー」
『ライブ・アット・マーフィーズ・ロー』です。

 ドラムスとベースとのトリオによる演奏です。
拍手とってもショボイですから、会場は小っさなライブハウスみたいな所なんでしょうか。

 この人の演奏、初めて聴いたんですけど、イヤ〜、ものすごいテクニックですねぇ。音は柔らかくて温かみのある物なのですが、フレージングはクール。時折入るコード弾きの音がとても気持ち良い。
 これ聴いていると、演奏を実際に見てみたくなりますねぇ、どんな風に指動くんだろう。
 愛知芸術劇場で収録された「寺井尚子」『ライブ』です。
 ジャズバイオリン奏者といえばステファン・グラッぺリ位しか知らないのですが、世界には他にもたくさんの演奏者がいるみたいです。しかし、日本で有名なのはこの方のみでしょうね。

 初めクラシックの世界に居て、何かをきっかけにしてジャズに転向したという話はよく聴きますが、この方もそういう経歴の持ち主なのでしょう。従って、演奏は正確。安心して音に没頭できます。
 共演のギタリストにはリー・リトナーを迎えて、彼と自身のオリジナル曲が3分の2を占めます。
 会場に響き渡る、バイオリンとギターの絃の二重奏がとっても気持ちイイ。
「松永貴志」 が18歳の時にニューヨークで録音された
『TODAY』です。

 この人、家にあったピアノを誰に教わる事もなく弾き始め、楽譜も読めぬまま、自己流で作曲までこなしてしまうような天才的な子供だったようで、15歳でプロデビュー、17歳で初アルバム録音、でっ、これが3枚目のアルバムだそうです。
 その間、ハンク・ジョーンズ、ハービー・ハンコックなどの著名ジャズメンに絶賛され、共演なども果たしています。
 このアルバム聴くと、ほんとに天才っているんだな、っと、納得せずにはおられません。テクニックだけではなく、イマジネーションの素晴らしさに圧倒されます。それは自作曲だけでなく、スタンダードにおけるアドリブ部分にも感じられる事です。


アルトサックス奏者「矢野沙織」『アンサー』です。

 今、日本では女性ブラス奏者がブームの様に何人もデビューしていますが、その先鞭を付けたのがこの人ではないでしょうか。この人も17歳位の時に1stアルバムを録音しています。
 アルバムを出すごとにテクニックも確立してきて、その進歩の度合いが素晴らしいですね。
 そしてそれ以上に素晴らしいのがその音。音に気持ちがしっかり乗って、感情を直接伝えて来ます。その点が、最近デビューした他の女性ブラス奏者との大きな違い。
 このアルバムでは独自の奏法も会得したみたいで、心揺さぶられる様な音が聴け、背筋がゾクゾクしてきます。
 それはまさに、ジャニス・ジョプリンの魂を絞り出すような咆哮とも言えるような声を彷彿とさせる、圧倒的な音です。
 でもねぇ〜、このジャケットはないんじゃないでしょうか。全く中身を表しているとは言い難い。これちょっと酷過ぎ!!

ページトップへ                         前へ         次へ